いい加減シリコンバレーを目指すのを止めませんか

引き続いてベンチャー企業の話題。

昨日はコロンビアMBAでJapanese Entrepreneurshipと題したイベントが開催された。ご登場いただいたのは、Japan Tripでも大変お世話になった、アーネスト比嘉さん。コロンビアにも彼の名前のついた部屋がある。もう1人は、リサ・パートナーズの創業者、井無田さん、そして、エレファントデザインの西山さんだ。

このイベントを通じて、日本でベンチャー企業が育たない理由について改めて考えてみた。
ちなみにここでいうベンチャー企業というのは、日本に物凄く多い独立開業のことではない。爆発的なGrowthの野心を持っている「ベンチャー」企業だ。


①政府の支援が無いため、ベンチャー企業が育たない
→ほぼウソだと思う。

実効的な支援が無いのは本当かもしれないけど、それが大きな理由になっているとは思えない。
政府の支援と言った場合、直接的な支援(投資や融資)と間接的な支援(法律などの環境整備)なものがある。
直接的な支援は、先に書いたとおり、政府発では、出来得る限りのベンチャー支援策は行っているように感じる。ベンチャーは、海のものとも山のものとも知れない怪しい「海山」なのだ。皆が理解できないからベンチャーなのだ。そもそも怪しいのだ。「軍事」みたいな強烈な理由をはさまない限り、こんな赤字国家でそんな訳の分からないものに国が税金を投入することに慎重になってしまうのは仕方が無い。

別にベンチャーが大事では無いと言っているわけではない。能力的に政府では難しいと感じるのだ。ベンチャーキャピタリスト達が生死をかけてそれを選んでいるところに、政府が出て行って素晴らしいものを発見できるとは正直余り思わないのだ。物凄い情報の非対称性や、流動性が危機的に少ない状況(物凄い尖がった才能とかはこの例)ならば話は別だけど、正直現在は余りそういう状況にないと思う。

後者の環境整備的な支援については、日本はかなり良いように感じる。最低資本金の引き下げや自由財産(会社が倒産した時に、どこまで経営者に資産を残すべきか)の拡大など、かなりの部分はここ10年で劇的に改善している。ちなみに、アメリカには、シリコンバレーの成功要因の一つとして、「政府が積極的に絡まなかったこと」をあげる人がいるくらいだ。


②投資サイドが弱いからベンチャーが育たない
→そうかも知れない。

これについては、西山さんが強調されていた。日本は商業銀行中心の間接金融が非常に強力な国なので、現状では直接金融で対応せざるを得ないVC投資について、いままでどうしてもおろそかになっていた。エンジェルとかの数もえらく少ないのだ。解決方法は基本的には二つしかないと思う。

一つは、直接金融のプレイヤーを充実させるというアメリカモデルだ。日本のVCは、既存の大企業や金融機関の子会社として出てきたものが多く、海山にはなかなか投資できない。最近は、米系VCの進出や、独立系VCの誕生等、現在もかなり状況は改善してきていると思うけど、やはり組織としてやる以上は例たーステージが基本となるため、まだまだ発展途上の感はある。
アメリカはどうなっているかというと、アーリーステージの本当にやる気とパワポしかありません、という状態の時にでも、↓こういう塚原会長みたいな、ものすごい金持ちがたくさん居て、海山に投資できるのだ。
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分かりやすく言うと、アメリカは物凄い格差社会だからこそベンチャーに金が回っているとも言える。

もう一つの考え方は、間接金融のプレイヤーにこの分野に進出してもらうというもの。「預金を預かる金融機関が・・・」等の批判があることは100も承知だけど、日本の商業銀行は明らかにアメリカのそれよりも優秀な人を集めているし、能力としては可能性があるのではないかなあという気もする。ただ組織のそもそもの成り立ちや遺伝子と反する気もするので、やはりこれも厳しいのかな。


③日本は起業家を尊敬する風土にないから、ベンチャーが少ない
→まあ、そう言えない事もないけど、本当かなあ。

この命題、前半部分だけはあっている可能性はあるのだけれども、接続詞が決定的に違うと思うのだ。つまり、確かに尊敬する風土はないかもしれないけど、それがベンチャーが少ない理由にはなってないと思うのだ。起業家のケースを読んでみても、「respectされたい」というモチベーションでベンチャーをはじめる人って凄く少ない。ましてや、今まで会ってきたEntrepreneur達を見る限り、そういうことにそもそもValueをおいて居ない人ばかりだと感じるのだ。

昔から良く言われることとして、「アメリカでは起業家が最も尊敬されるけど、日本では大企業に入ることが最も尊敬される」と言うものがある。正直、これはかなり怪しい。比較の問題で言えばアメリカの方が軽いと言えるかもしれないけど、一般的には、アメリカでも絶対に大企業に行く方が尊敬される。ビルゲイツでさえ、ジョブズでさえ、ハーバード辞めたり、独立する時は親に真剣に心配されているのだ。ベンチャーを始める人がクレジットカードを作れないのは日本でもアメリカでも一緒だ。アメリカでも日本でも、起業するというのはやはりどこか「変わり者のはぐれメタル」感がある。

アメリカで尊敬されているのは「成功している」起業家なのだ。アメリカに比べればそこまでではないかもしれないけど、日本でもミキタニさんだって、ソンさんだって、すごく尊敬されている。ベンチャー万歳!と2年間教えられ続けているビジネススクールの学生ですら、やはり起業する人というのは極々僅かで、大半が皆が知っているような企業に行くし、一般的にはそれを「Wonderful」と言う。


④日本は失敗を許さない文化であるため、チャレンジできない
→「失敗」と「復帰」の定義によるけども、かなり怪しいと思う。

これについても、アメリカでも同じだ。アメリカの大企業でピカピカの人で、「元起業家です」という人に会ったことがない。一般的には、アメリカでも、失敗した起業家は、また起業するしかないのだ(勿論例外はありますが)。アメリカは日本以上に信用が大事な文化なのだ。

ただ、一つ思うのは、日本よりも「会社人間」の数が少ないというのは何となく本当な気がする。ここで言う会社人間とは、一生懸命働くという意味ではなくて、会社に自分の非常に多くの基盤が乗っかってしまっている人のこと。アメリカでは、会社以外のコミュニティが複数ある場合が多く、そこがセーフティネットになっている気がする。


じゃあ何が原因よ・・・って、長くなったので、また続きは別の機会に。
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by noritaya | 2010-04-08 11:02